2018/05/16

「CSがサクセスの仕組みを作る」片山氏が語るカスタマーサクセスデザイナーとしての考え方(後編)

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前編の記事ではグッドパッチの片山氏にカスタマーサクセスCSが担う業務領域や、広い業務領域をカバーするため周りを巻き込みながら支え合うという関わり方や他チームとの距離感の近さ。更にはカスタマーサクセスチームとしてKPIを定めていない理由などをお伺いしました。

今回の記事では、カスタマーサクセスやチームの生産性を向上させるシステムやグッドパッチにおけるカスタマーサクセスの存在意義、即戦力よりも求めている人物像や今後のカスタマーサクセスチームでの挑戦などをお話し頂きました。

 デザイナーやエンジニアも当事者意識を持ってくれるポートチャンネル

大塚
カスタマーサクセスにとってシステムは重要ですよね。生産性や効果が変わってくると思いますので、少しシステムの話が出来ればと思います。今カスタマーサクセスが使っていらっしゃるシステムは何がありますか?

Salesforce、Intercom、Slackでしたっけ?

片山
あとはHelp Scout(ヘルプスカウト)を使ってメールとヘルプページを管理しています。NPSは以前Nicereply(ナイスリプライ)というツールを使用していましたが、IntercomでConversation Rating機能(カンバセーションレーテング/問い合わせ対応の満足度調査)がリリースされたので、現在はこちらの機能を使っています。メンバーごとに評価内容をIntercom内で確認できるので、とてもわかりやすくて気に入っています。

あとツールとしてよく使うのはGitHubですかね。

藤本
機能改善の進捗管理もGitHubを使うのですか?

片山
どちらかというとイシューです。不具合やバグをGitHubに貯めています。

大塚
色々と使っている中で、システムの仕組も色々と試行錯誤されている部分があるのではないかと思います。試行錯誤をした中でシステム体制の中で、一番気に入っているところなどはありますか?

片山
SlackにIntercomでのユーザーとのチャットのやり取りや、Help Scoutでのメールのやり取りを一つのチャンネルに全部流しています

大塚
全部ですか!?

片山
凄い量になりますが、開発チームのエンジニアさんやデザイナーさんも見てくれるんです。そこで私が分からない事や理解し切れていないことがある時に、Slackに直接書き込んで、メンションを付けて流してくれて「そういう事か!」と理解できることもあります。

対応をしているメンバー以外にも当事者意識が持てるな、と凄く思いますね。サポートチャンネルは凄くお薦めです。

大塚
藤本さんもやっていらっしゃるんですか?

藤本
寝てる以外は、大体Slackにいます(笑)。うちで使っているお問い合わせフォーム経由であればSlackに全部通知が来るので、そこですぐに返信をしています。

それに対して周りのメンバーからも色々と意見が出てくるというのは良いですよね。

 セールスやマーケティングと連携したシステム作り

大塚
今はSlackとの連携についてお話をして頂きました。Salesforceも使っているとのことでしたが、どのような役割で使っていらっしゃるのでしょうか?

片山
セールスメンバーが営業で使うだけでなく、MAツールのSalesforce Pardotを導入しています。Salesforce Pardotを使ってのマーケティング施策をカスタマーサクセスチームとマーケティング担当者と連携して進めることがようやく出来るところに持って行けた、というのが今の状況ですね。

大塚
IntercomとSalesforceはシステム連携されているんですか?

片山
システム連携は可能ですが、十分な情報を連携するには少し手を入れる必要があるので現在は連携していないですね。

大塚
そうなると、例えばカスタマーサクセスでやり取りをした情報などはセールスやマーケティングのメンバーはどうしていますか?

片山
ユーザーをメールアドレスで検索してお問い合わせ履歴が確認できるので、セールスのメンバーも訪問前にIntercomで検索をすることもあります。

大塚
きちんと見ていらっしゃるんですね。凄いですね。

片山
逆に私たちが訪問予定をカレンダーで見ていれば、お問い合せ内容をあらかじめ共有し、内容を踏まえてお話をしてきてもらえますか?ということもあります。

藤本
その訪問のスケジュールもカスタマーサクセスは分かっているということですね。

片山
見ようと思えば、ですね。常に管理していたり、共有していたりするわけではありませんが、カレンダーを見てタイミングが合えばでしょうか。こちらで一方的に判断するのではなく、セールスとユーザーの利用背景を踏まえながら、相談することはよくあります。

藤本
でもセールスがどういうお問い合せをしているのかを見てくれるというのは、良い文化ですね。

大塚
凄く良い文化だと思います。

片山
セールス担当者もお客様をすごく大切に思っているので、さまざまな方法でフォローしたりサポートをしてくれています。カスタマーサクセスチームとしても、セールス担当者の存在はとても心強いです。

 社内におけるカスタマーサクセスの立ち位置と存在意義

藤本
グッドパッチさんの中では、とてもカスタマーサクセスを重視されていると思います。その中でカスタマーサクセスはどういう存在で、自分たちもどのような価値があるんだよと周りに伝えていますか?

片山
できるだけ、やっていることと結果は社内ドキュメントツールで見える化していまして、最近は隔週で「CS新聞」を出すようにしています!ほかにも社内LT(ライトニングトーク:短めのプレゼン)が弊社は盛んなので、メンバーが出てみたりだとか、クライアントサービス事業部のメンバーが「Prott」を使ってくれているので、そこでフィードバックをもらったりもしています。

そこに対するリアクションをなるべく早くカスタマーサクセスチームから返そうと個人的には思っています。誰が返しても良いんですけど、今まではPMとカスタマーサクセスが分かれていたのでPMが返していたということもありました。でも今は同じだし、と思って社内のメンバーからのフィードバックや「これどうやったら良いですか?」というものも即レスしようかなと思っています。

藤本
ES(従業員満足度)を高めようとしているんですね。

片山
「Prott」は元々クライアントサービス事業部で必要になり開発されたサービスという背景もあり、社内のメンバーもユーザーとして捉えています。そういう所から少しずつ、頑張っているなとか社内ESを高めようと地道にやっています。あとは、私が今はプロダクトの戦略ミーティングにも出ています。

大塚
凄いですね。

片山
CTOの席が近いので、巻き込んで頂きました(笑)。

会社の中でも決定権がより強い層と話せる場があるので、その場では「カスタマーサクセス視点の発言」をするように心がけています。先ほど藤本さんも仰っていた通り、カスタマーサクセスの仕事の領域って他の職種のメンバーがやろうと思えば取られてしまうんです。

大塚
確かにそうですね。

片山
なので、「サポート以外にやることはありません」みたいな状況にもなりかねないと思っています。でもそれだとSaaSプロダクト開発としては本質的ではないと個人的には思っているので、カスタマーサクセスの範囲を別の職種のメンバーにカバーされないようにしないといけない。しかも弊社はUXデザイナーが多いので、やっている距離がかなり近いんですよ。

藤本
そうですよね、プロがいますもんね。

片山
彼ら・彼女らも凄く頼りにはしていますが、ユーザーとリアルタイムでヒアリングができるという強みがカスタマーサクセスチームにはあります。開発チームにとってもリアルなユーザーのフィードバックはとても参考になるので、プロダクトをより良くし続けることが「カスタマーサクセス」チームとして存在できる理由になると思っています。 

 カスタマーサクセスが全体を把握している必要性

大塚
片山さんと藤本さんのお二人を見ていると、仕事を取りに行くとか巻き込んでいく姿勢がカスタマーサクセスとして、凄く大事なんだなと感じています。それが事業全体をスケールする役割になるんだろうなと感じたので、凄く勉強になります。

藤本
どうしてもプロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャー、プロダクトオーナーからデザイナー、エンジニアへとなるとカスタマーサクセスはどうしても情報共有されるのが遅い。全て決定されてからカスタマーサクセスに共有されたりしがちなので、最初のタイミングで情報を取りにいくというのは大事だと思います。

「1か月後にこれが出るから、オペレーション宜しく」みたいな状態で、全部決められてしまったら、「ここはこうした方が良いのに」とカスタマーサクセスの観点から思っても出来なかったりします。

大塚
そのような事はグッドパッチさんでもあったのですか?

片山
「こういう機能を作ります」と言われて「あっ、そうなんですね」みたいなことはありましたね。デザイナーやエンジニアはマインドセット的にはフィードバックはウェルカムなんですけど、カスタマーサクセスに情報が共有されるころには、ほとんど出来上がっている。

そうなると「ここから何か言って良いのか?」みたいになってしまう。

大塚
なってしまいますよね。

片山
それでも覆した方が良いようなレベルのものであれば絶対に言った方が良いのですが、細かい事だとこちらも躊躇してしまいます。「取り合えずこれで…いくか…」みたいになってしまうことはどうしてもあったりするんです。

だから藤本さんが仰っていることは凄く分かりますね。なので、開発スケジュールはプロダクトの戦略とセットで理解できていることが必要だと思います。今自分たちが開発している内容に納得感があるということは大切ですよね。

藤本
そこは凄く大事だと思います。片山さん自身が納得するうえでも、他の二人のメンバーに毎週のミーティングで伝えられますからね。その時の説明も説得力が違ってくると思います。

情報は凄く大事です。カスタマーサクセスは情報だけで生きているようなものです。

片山
確かに(笑)

藤本
例えば、お知らせを行うタイミングだけでも、お問い合わせの量が変わって来たり、お知らせ一つとっても素材を用意して画像付きでやるとか。色々と細かいことをやることが出来ます。

大塚
そうすると、カスタマーサクセスは全てに関わってくるので、最初から入っていなければならない。

片山
そうなんですよね。結局全部に手足を突っ込んでいけた方が良いです。

 グッドパッチが即戦力よりも求めるカスタマーサクセスの人物像

藤本
今は3名ですが、カスタマーサクセスのメンバーも今後は徐々に増えていくと思います。仮に片山さんが今を採用するとしたら、どのような人を入れようと思うのでしょうか。

片山
5月に1名入社を予定していまして、カスタマーサクセスという職種に就くのは今回が初めての方です。ですが、サポートをしたこともあれば、マーケティングもイベント企画もPRも、というように幅広くやってきた経験の持ち主です。

カスタマーサクセスの採用フローではライティングのテストを行うのですが、今まで見た中で一番素晴らしかったです。日本語の間違いも無ければ、程よく親しみ易い。

※ライティングのチェック項目(一例)

藤本
その文章のライティングチェックは、片山さんがやり始めたんですか?

片山
そうです。

藤本
さすがです。一度そのテストケースを上げて書いてもらい、状況をシミュレーションしているということですね。

 カスタマーサクセスがちゃんとサクセスさせられる仕組みを作る

大塚
最後にですが、今後カスタマーサクセスチームで挑戦したいことはありますか?

片山
今年「Prott」はリニューアルを予定していまして、同時に2つのプロダクトが並行している状態です。もちろん今までご利用いただいた方には引き続きご利用いただきたいですし、リニューアル後に喜んでいただきたい。そのためにしっかり良いプロダクトに育てていくというのがカスタマーサクセスチームだけではなくて、開発チームとしてのミッションとしても凄く大きいです。

カスタマーサクセスの視点で他の競合プロダクトを見ていてもカスタマーサポートの導線が完璧なところは正直あまり無いと思っています。

今までは制約があって出来なかったところが、それを出来るだけリニューアル版でカバーして良いものにしていく。最初は未完成だったとしても、理想の形をゴールとして見える状態にしておくことをしっかりとやっていきたいです。

そうすることでナレッジがカスタマーサクセスチーム内で溜まっていくので、クライアントワーク事業部のクライアントワークの案件にナレッジを還元することもできます。そしてクライアントワーク事業部のメンバーからはプロダクトへのフィードバックをもらう流れをこれからも継続していけたら良いなと思います。

藤本
リニューアル版のカスタマーサクセスの導線というのは、片山さんが最初から入って必要な導線を伝えていたりするのですか?

片山
最初は、どの機能を作るかというような開発が優先順位高いですが、ベータ版に向けてようやくカスタマーサクセスの導線も整え始めています。去年末からカスタマーサクセスのチーム内ではリニューアルに向けて必要なことをまとめているので、フェーズにあわせて、開発チームと連携して進めているところです。

藤本
調整力や巻き込み力ですね。

片山
でも、あまり大きな開発は必要ないものだったりもしますし、新しくフィードバックツールも入れるので、どのように運用をしていくかを考えながら自分たちで試用したりもしています。

藤本
素晴らしい、カスタマーサクセスは何でもできる。

大塚
そうですね。カスタマーサクセスは事業を成功させるために何でもやっていますよね。なので、カスタマーサクセスをどのような表現をしたら良いでしょうか。一言で表現をしているものは社内でもありますか?

片山
特に社内でカスタマーサクセスを一言で表現する言葉はありませんが、去年の年末に社内LTする機会があり、トピックが「2017年の振り返り」という幅が広いトピックでした。去年はチャレンジの多い一年だったので、決して社外では話せないことまで反面教師にしてほしい思いで発表しました。

LTのタイトルは「プロダクトつくるならCS(C=ちゃんと,S=サクセス)させよう!」というタイトル。「CS」にはサポート(Support)や満足(Satisfaction)、サクセス(Success)など色々な意味がありますが、プロダクト開発にもっとも必要な「S」はサクセスの「S」だと思っています。プロダクト開発に携わるメンバー全員が「良い状態(サクセスした状態)」を目指すべき、ということは部署や職種関係なく、改めて認識する必要があると考えて、このタイトルにしました。

大塚
サポートや満足ではなくて、サクセスというのをやりたいということですね。

片山
弊社の場合、カスタマーサポートだけが業務の「CS」は自社で内製をしている意味がないんです。カスタマーサクセスチームとして名乗るのであれば、ちゃんとサクセスさせられる仕組みを作れることが必須です。弊社は最近は全員がデザイン思考で考えるというのが、カルチャーになっています。

全て「なぜ?」がないと社内のイベントであっても通らないんです。何故それをやるべきなのか?というのが強いので、カスタマーサクセスデザイナーという表現がやっていることとして、グッドパッチ でCSを名乗るのであれば近いのかなと最近思います。

大塚
なるほど。

片山
役割として設計者(デザイナー)に近いかもしれません。「ユーザー」という表現がプロダクトを使っている人達を指す言葉だとしたら、その前段階である「カスタマー」からCX(体験)を含めてケアしてあげたい。

大塚
グッドパッチ のカスタマーサクセスチームは〇〇である。と言ったらカスタマーサクセスデザイナーである、という表現になるということですね。

 まとめ

今回お話を伺っている中で感じるのは、カスタマーサクセスは来る仕事を待っているのではなく自ら取りにいくということ。その上でカスタマーサクセスじゃなければ出来ない仕事の定義がないからこそ、何でもできるということ。周りを巻き込んでいくグッドパッチのカスタマーサクセスは、チームや全体をより良くするためにも重要な役割を担っているとも感じました。

リアルタイムにユーザーの声が聞けることがカスタマーサクセスの強みというお話からも、仕事を取りに行くだけではなく、情報を自ら取りに行くことの姿勢が伺えました。チャットサポートでお問い合わせの回数を意図的に増やしているのも、より具体的な悩みや問題の意図を汲み取るため。

ユーザーの声も含めたナレッジをカスタマーサクセス内で溜めることで、チーム全体に還元・発信することが可能となり、事業全体をスケールすることにも繋がります。

「プロダクトを作るならCS(ちゃんとサクセス)させる」

という強い想いは、常に「なぜ?」思考を持つグッドパッチのカルチャーと併せて、新たなカスタマーサクセスの可能性を感じることが出来ました。

 

■大塚 真吾
プロサッカークラブのマネジメント職を経験後、ダイレクトマーケティング支援の株式会社ファインドスターに入社。
サブスクリプション型の通販のマーケティングを100社以上支援。2013年、スタークス株式会社に入社し、2016年取締役に就任。
現在、クラウド型の物流プラットフォーム「クラウドロジ」とLINE@に特化したCSツール「CScloud」を提供。マーケティング・セールス・カスタマーサクセスを統括。

■藤本 大輔
1982年 福岡生まれ。テレマーケティング会社で電話営業を経験の後、コンタクトセンター運営会社に移り約10年間大手インターネットサービスプロバイダのコールセンターマネジメントに従事。その後、大手ソーシャルゲーム会社のCSを経て、フリマアプリ運営会社のCSグループマネージャーとしてチャットサポートの導入やCSイベントの開催を主導。現在はコードキャンプ株式会社のCSチームを率いる。本業の他に日本で唯一の「カスタマーサポート エバンジェリスト」として、コンサルタントやCSイベントの企画などで活動中。キャッチコピーは“CSに狂っている男”。

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