2018/05/16

【前編】「将来なりたい職業No.1」をCSに。メルカリ執行役員「山田和弘」の挑戦

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こんにちは、CSジャーナル編集長の大塚です。

今回は、CS実践者インタビューということで、日本でただ一人「カスタマーサポート エバンジェリスト」として活動している藤本大輔さん現在はコードキャンプ株式会社でCSを担当しながらカラクリ株式会社のCS顧問を務める)と共に、株式会社メルカリ(https://about.mercari.com/CS責任者でもある、執行役員の山田和弘さんにお話を伺ってきました。

あなたもご存知かもしれませんが、メルカリにとってCSは、お客さまの課題解決をすべて担う大事なセクションであり、サービス拡大の要としている重要な役割を担っているセクションです。

CSなくしてサービスの拡大なし。創業当初からCSにこだわり続けてきた背景には、メルカリ、そして山田さんならではのCSに対する想いが込められていました。

なぜ、メルカリはそれほどまでにCSに力を入れるのか?従業員の半分以上がCSの理由とは?優秀なCSスタッフをどうやって集め続けているのか?

そこには、日本唯一のユニコーン企業となった、メルカリ大躍進を支え続ける、メルカリ独自のCS哲学が随所に浸透しているのが垣間みえました。

プロフィール紹介

株式会社メルカリ 執行役員 山田和弘
株式会社ミクシィのカスタマーサポート部門の責任者として約7年間従事。ソーシャルゲーム業界団体・JASGAの立ち上げ、青少年保護に関わるサービス健全化施策を実施。
2014年5月に株式会社メルカリに参画。カスタマーサポート部門のマネージャーに就任し、仙台拠点の立ち上げやカスタマーサポートの業務設計、メンバーの採用・育成を担う。
2017年2月CSマネージャーから執行役員に就任。CSキャリアの天井をぶち壊すために日夜奮闘中。

 メルカリが電話対応を始めた理由は意外にもこんな事がきっかけでした

藤本
福岡のCS拠点ができて、東京・福岡・仙台をあわせると、今、何名くらいの方がCSにいらっしゃるんですか?

山田
400名くらいになっています。

藤本
福岡では電話対応を始められています。

メルカリは非常に多くのユーザーにダウンロードされているし、日本でもトップクラスのユーザーがいるサービスじゃないですか。

そこで電話対応をやるということは、費用的にもオペレーション的にも導入するのに結構な判断が必要だったと思います。

そもそも電話応対をやろうと思ったキッカケはなんだったのですか?

山田
電話応対を始めたキッカケは、CSのメンバーから「そろそろ電話応対をしたほうがいいんじゃないか?」と提案があったからなんです。

そのときは「電話か」と思いました。どうしてもコストもかかりますので。しかし コストがかかったとしても電話でしか提供できない価値もあると考え、実施した方が良いと考えました。

ポイントは「カスタマーサービスもお客様体験の一部」ということなんです。

 カスタマーサポートは「どのポイントに、どういう顧客接点を用意するか?」これが大事

山田
例えば「大型らくらくメルカリ便」というヤマトさんと連携している配送サービスがあるのですが、すでに簡単に発送できるようにはなっているものの、それでもわかりにくいと感じるお客様もいます。

「大型らくらくメルカリ便」を使うには、荷物の集荷手続きをしてもらう必要があったり、ヤマトの配達員さんとやりとりする必要があります。

荷物の集荷に配達員の人が来ているときのお客様の「できない、わからない」に対して、メールで翌日に返事を返しても、圧倒的に遅いわけです。

その場で問題を解決する必要があるんですよね。

藤本
確かに、私も前職で似たようなことがあった時、会社に直接電話がかかってきました。

山田
そうですよね。先ほどの例でいうと、お客様体験を考えた時にパパッと電話をしてその場で回答を得られて、お客様の疑問がすぐに解決される。
そのほうがより良いサポートができるんじゃないかと思って、電話の応対を始めています。

カスタマーサポートも、カスタマージャーニーマップ的な捉え方をしていく必要があります。
お客様がサービスを利用していく中で、 どのポイントに、どういう顧客接点を用意していくかこれが非常に重要かなと思っています。

藤本
電話ありきではなく、すぐその場で解決したいというニーズへの解決手段として電話を用意されているんですね。

 メルカリにとってCSは事業を成長させるドライバーの1つ

藤本
色々な会社の方にCSのお話を聞いていると「今どこが一番イケてるCSなの?」って質問されるんですが、だいたい私はメルカリさんを押すんです(笑)

山田
そんなことないですよ(笑)

藤本
私はCSもプロフィット化をしていくべきという考えをもっています。

ただ、CSに関わっている方の中には、なかなかそのイメージを経営層へ持ってもらえないという悩みを抱えていたりするんですよね。

でも、メルカリさんの場合は、人材もお金も、CSにかなりの投資をされています。
それはトップの意思決定による部分もあると思うのですが、山田さんとしてはCSにどんな価値を感じているのか、長くCSに携わっていく中で変わっていったものがあるのか?

その辺りはどうなんでしょうか?

山田
僕は新卒からずっとカスタマーサポートをやっています。

いろんな業種でカスタマーサポートをやってきて思うのは、「すべての事業においてカスタマーサポートが大事だとは思わない」という事です。

なぜかというと、カスタマーサポートの役割は「事業を伸ばすための成長ドライバーの1つ」だと思っています。

例えば、消費者の行動で、「所有する」という行動と、「利用する」という行動があったとします。所有してもらうには、お客様の興味を惹きつけるためのマーケティングが必要です。

利用するという行動においては、使い続けてもらうのが重要で、離脱をさせないとか、継続的な関係性を作ることにより予算を割いていくことが重要になります。

そういう利用してもらうことが重要な事業においては、カスタマーサポートはとても大切じゃないかと思っていますね。

 設立1年目でCSへの大規模投資はすでに決まっていた

藤本
色々な記事で、山田さんはかなり口説かれてメルカリに入ったみたいなことを目にします。ちなみに、メルカリに入って今何年目ですか?

山田
2014年に入ったので、今4年くらいになります。

藤本
山田さんがメルカリに入る、一番の決め手になったポイントというか、口説き落とされたところはどんなところですか?(笑)

山田
話に尾ひれがついている感がありますね(笑)

口説き落とされたということは当然なくて、メルカリの事業に興味を持ったことと、自分の経験を活かせる役割がそこにあって、それを任せていただくことができたことだと思っています。

代表の山田と社長の小泉に一番最初に会った際、「メルカリのカスタマーサポートをどういう風にしていくのがいいんだろう?」といったMTGをさせていただきました。

そこで当時のメルカリの事業計画を見させていただいて、この先2年くらいで事業がどこまで成長していくか教えていただきました。

その際、今お問い合わせ数がこのくらいきていて、メンバー1人あたり一日このくらいの対応をしているから、2年後くらいにはどういった体制が必要になるかという話に自然になって、このままいくと、「すごい人数必要になりますね」って話をしていたんです。

山田や小泉は、「じゃあ、大規模なカスタマーサポートの組織を作る必要があるね」って話をされていて、「CSをスケールさせていきやすいところに拠点も設けてやっていくか」みたいな話をされていたのがすごい印象的でした。

当時メルカリは設立からまだ1年経ったくらいで、 当時の感覚としてはインターネット関連の1年目くらいのベンチャー企業が、カスタマーサポートに大きく投資する話を聞いた事がなかったので、すごいなと感じました。

 執行役員になって変わった人に対する価値観

藤本
最初からすごい投資をされていたと。

そんなCSとしてのミッションというか、チームとしてこういった方針でやっていこうみたいな、CSで最終的に掲げているものは何かあるんですか?

山田
基本的には事業と同じ目標を持つようにしています。当然、 会社のミッションがある中で、それを一段階分解した時に、利用者の方から信頼を得ていくのが重要だと考えています。

今でいうと「サービスの安心安全」と「利用者の方に親しみを持ってご利用いただけるようなサービスになっていこう」というところです。

そういったところをスローガンに掲げてやっています。

藤本
山田さんが執行役員になって、経営側のポジションになりました。

そうした中で、考え方に変化があったりするのか、チームとしてでもいいですし、個人的な想いの部分でもいいですし、何かその辺りありますか?

山田
変わった部分と変わらない部分があると思います。

変わらない部分としては、 カスタマーサポートを通して、サービスの持っている価値を世の中に広げ、お客様に貢献していきたいと思っています。

それで、事業が拡大していったり、最終的に従業員が良くなっていったりとか、さらにお客様に質の高いサービスを提供していきたいと思っています。そういう活動の一環の中にカスタマーサポートがあると思っているんです。その感覚は今も昔も変わっていないですね。

経営に近くなったところでいえば、当初自分の中で大きな変化はなかったのですが、とはいえ、何をすればいいんだろうと思いました。

なので、いろんな方に話しを聞きました。その中で、採用や育成に対する考え方は変化しました。やっぱり、自分が考えることであったり、会社が考えることを実現していくのに、自分一人でできるわけでは当然ないので、いかにそれを実現していってくださる方や、更に発展的に考えていってくださる方を集めていけたり、成長していける環境を作ることがとても大事だなと思うようになりました。

執行役員として、お客様対応の面だけではなく、新たにそういうことにも責任持って事業をやっていくのがとても大事なことだと思ったんですね。

お客様の対応に責任を持つのは当然なんですけど、それをやっていくためにも、 どんな人と一緒に働いていくか、メンバーにどう成長していって貰いたいか、みたいなところはこだわりが強くなりました。

 理想の組織は「お客さまが最高意思決定者」

大塚
山田さんが執行役員としていらっしゃらなかったときは、どなたかが採用に対する投資を決めてらっしゃったんですか?

山田
基本的には僕が判断していくところが大きかったと思いますが、小泉と一緒に話しながら考えていったというところです。

大塚
決裁権は変わったと思うのですが、採用のところに関しては強化しやすくなるものですか?

山田
メルカリはもともと従業員に裁量を広く与えられている会社なんです。

金額的な決済のラインはあるのですが、経営に提案もしやすい環境なので、それまでもやりずらかったことや、やりたいことができなかったみたいなことはないんですよ。

藤本
メルカリさんの場合はトップと直でやりとりする感じですね。CSだと意思決定者の間に何人も挟むピラミッド型の階層社会が多いです。

一同
良く聞きますよね。

山田
確かに。 僕が理想としている組織というのは、ピラミッドを作るのであれば、一番頂上はやっぱりお客様なんです。

お客様が最高意思決定者。その最高意思決定者に対して提案を出していくのはメンバーなので、メンバーがいかに良い提案をできるかは、組織としてすごく重要です。

だから、そのメンバーに裁量も与えていきたいですし、裁量を与えても回る仕組みを整えていったり、業務の整理をしていくのが重要で、そこをリーダーやマネージャーはしっかりやっていきたいと思っています。

 なぜメルカリには優秀なCSスタッフが集まるのか?

藤本
チーム作りは採用の時に自走できるような人材を取れるかどうかにかかっていると思います。私もメルカリさんの現場リーダーの方と仲良くさせていただいていますが、そうした方ばかりです。

採用でのこだわりとか、チャネルやフローなどでこだわっているところはありますか?

山田
メルカリは全体的に、リファラル採用が多い会社ではあります。

既存社員からの紹介により、面接を受けていただく機会が多くて。採用にいたれば、知人もいることでパフォーマンスが発揮しやすい部分はあるかなと思っています。

やはり、 1人で仕事をすすすめていくよりも、複数人ですすめていったほうが大きな成果は出せると思うので効率的ですよね。その複数人の関係性を作れるように、会社としてもコミュニケーションを活性化させる取り組みは強化しています。

 カスタマーサポートのスタッフは、一緒に事業を推進していく仲間

藤本
CSで採用するときは正社員か契約社員、他はインターンと雇用形態を絞っていたと思うのですが、それは今も変わっていませんか?

山田
はい、変わっていないですね。正社員の登用も積極的に行なっています。

藤本
その意思決定自体かなりすごいなと思っています。
一般的なCSだと、社員は数人でアルバイトの方が何百人もいるみたいなところがほとんどです。

でもメルカリさんは積極的に正社員雇用、少なくとも契約社員として採用をしているじゃないですか。そこの意思決定ってどう決まっていったんですか?

山田
まずメルカリは、非常にカルチャーを重要視しているという前提があります。その上で会社の約半数がカスタマーサポートをやっている会社なんですね。

そのカスタマーサポートのスタッフを労働集約的にリソースとしてみるのか、一緒に事業を推進していく仲間と見るのかで、我々は後者です。

我々は メンバーが長期的に安定して働いていくことや、従業員間のコミュニケーションを非常に大切にしていますし、そこから生まれてくるアイデアや、推進力があると信じています。

人がスイッチしていくコストってご存知だと思うんですけど、高いじゃないですか。

属人的なオペレーションは良くないのですが、 とびきりの営業にその人の技があるように、カスタマーサポートのメンバーにもそういった特性はあります。せっかくスキルを磨いてくれたメンバーを手放していくのはとっても惜しい。

それは会社の資産でもあるんですよね。だから、正社員雇用していくことに合理性もあると思っています。

メルカリは、10年20年と色んなお客様にご利用いただけるサービスとして世の中に定着させていきたいという想いがあるので、従業員の雇用形態も短期間に考える必要はないってことですね。

成果に対してフェアに評価!メルカリの大胆な評価制度

藤本
メルカリっていうしっかりとしたサービスがあって、そこでじっくりと働けるという環境があるから雇用形態もそれに即したものになっていると。

評価っていうのはどういった感じなんですか?クォーターごとにOKRというのは知っていますが、キャリアパスはどう整備されていますか?

山田
正直、キャリアパスに関しては、まだまだやれることがあるなと思っています。カスタマーサポートから、プロデューサーになっていくメンバーがいたり、人事領域で仕事をしていくメンバーがいますが、整備された仕組みで回っているというわけではないんですね。能力が評価されて、そういう機会を得てやっているみたいな。

ただ、カスタマーサポートメンバーの昇給は結構大胆につけることがありますね。

昇給もOKRに基づいて評価していく部分と、当社のバリューに合致した働き方ができているかというところで評価していきますが、発揮した成果によっては、一回の査定で大幅に昇給する事もあります。

それは ポジションは関係なく、成果に対してフェアに評価していこうという感じにしています。

藤本
CSというよりも、会社全体でそういった意識があるという事ですね。階層立てて組織を作るという雰囲気ではなく、CSでも、みんながリーダーでありプレイヤーでもありマネージャーでもありという感じでやっているのかなと。

山田
そうですね。そこを目指してやっていくところでもありますね。

藤本
確かに、CSが良いとユーザーの時間というか、世の中自体の生産性を上げるというか、極端な話、関わった人の人生を変える可能性もありえます。

今、CSはメールを返すだけだ、と仕事を定義してしまいCSが自分自身で価値を小さくしてしまっていることもあると思います。ただ抽象度を上げて考えれば、CSってかなり事業に貢献できるポジションだともいえるわけですよね。

山田
はい、あまり抽象的でもいけないとは思うんですけど、でも本当におっしゃる通りで、誰だって自分の仕事に価値がないなんて思いたくない。 価値が高いことをしたいですし、価値が高いことをしていったら、キチンと評価されていくということもしていきたいわけです。それを説明させていただくのはとても重要だと思いますね。

 まとめ

メルカリが費用もオペレーションコストもかかる電話対応を始めたキッカケはCSメンバーからの提案により導入を始めたという山田氏。カスタマーサービスもお客さま体験の一部であり、コストよりも電話でしか提供できない価値=その場での問題解決やお客さまがサービスを利用する上で、どのポイントにどういう顧客接点を用意しておくのかの重要性を伺う事が出来ました。

また、カスタマーサポートの役割は「事業を伸ばすための成長ドライバーの1つ」という考え方は、メルカリがカスタマーサポートに力を入れているのか。1年目からカスタマーサポートへ大幅な投資も、トップも含めた全員が重要性を認識しているからこそだと感じました。

カスタマーサポートのスタッフや従業員間のコミュニケーション、成果に対してのしっかりした評価など、お客様が中心にいながらもメルカリという会社が事業もスタッフも成長し続ける理由を垣間見れたように感じます。

後編の記事では、メルカリが求職者に伝えるカスタマーサポートの魅力や、スタッフが自分の最高を目指せる環境と評価基準。メルカリが考える重要な顧客体験とタッチポイントなどをお話しして頂きましたので、続けてご覧ください。

 

大塚 真吾
プロサッカークラブのマネジメント職を経験後、ダイレクトマーケティング支援の株式会社ファインドスターに入社。
サブスクリプション型の通販のマーケティングを100社以上支援。2013年、スタークス株式会社に入社し、2016年取締役に就任。
現在、クラウド型の物流プラットフォーム「クラウドロジ」とLINE@に特化したCSツール「CScloud」を提供。

藤本 大輔
1982年 福岡生まれ。テレマーケティング会社で電話営業を経験の後、コンタクトセンター運営会社に移り約10年間大手インターネットサービスプロバイダのコールセンターマネジメントに従事。その後、大手ソーシャルゲーム会社のCSを経て、フリマアプリ運営会社のCSグループマネージャーとしてチャットサポートの導入やCSイベントの開催を主導。現在はコードキャンプ株式会社のCSチームを率いる。本業の他に日本で唯一の「カスタマーサポート エバンジェリスト」として、コンサルタントやCSイベントの企画などで活動中。キャッチコピーは“CSに狂っている男

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