2018/05/16

【前編】「Zapposを超える!」究極の顧客志向で最も熱狂的なファンを持つビールメーカーへ

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写真:藤本氏(左)/もっちー(望月氏:中)/大塚(右)

こんにちは、CSジャーナル編集長の大塚です。今回は、CS実践者インタビューということで、「よなよなエール」「東京ブラック」「水曜日のネコ」「インドの青鬼」などクラフトビールを手がける株式会社ヤッホーブルーイング(http://yohobrewing.com/)の望月さんにお話を伺ってきました。

『ビールに味を!人生に幸せを!』をミッションに掲げるヤッホーブルーイングさんでは、「よなよなエールの超宴」といった、よなよなエールファンとスタッフで創り上げるイベントなども含め、ファンとの距離感をとても大切にされています。

今回はCS部門である「おもいやり隊」の“もっちー”こと望月卓郎さんに、CSに求められている役割やファンとの関わり方、そしてファンになってもらうためのCSとしての取り組みや考え方などについてお話を伺ってきました。

プロフィール紹介
望月卓郎(ニックネーム:もっちー)
役職:おもいやり隊(CS部門)    ユニットディレクター (通信販売の受注業務および個人のお客様対応の総合窓口)
略歴:タイ国チェンマイ市出身、東京工業大学情報理工学専攻科修了。大手私鉄会社で不動産・メディア事業の経験を積んだのち、IT/人材ベンチャーのマネジメントに従事。2009年ヤッホーブルーイング入社、2011年に通販事業責任者(2代目店長)となる。直営通販店舗の多店舗展開とSNSの取り組みを開始。2014年から経営企画ならびに流通受注部門の責任者を務めたのち、2017年から個人顧客の総合窓口である「おもいやり隊」に着任。温泉巡りが趣味。
実績:楽天市場店のみだった直営通販店舗の多店舗展開(Yahoo店、Amazon店、自社本店)。SNS(Facebook、Twitter)の取り組み開始。

 通販事業や流通の経験を生かしてCS部門を改革する

大塚
僕自身、ヤッホーブルーイングさんのファンなので今日は楽しみにしていました。今日はよろしくお願いします!
まず、「おもいやり隊」が担っている役割などを教えてください。

望月
業務内容は会社全体の個人のお客様の問い合わせ窓口になります。電話、メールでのお客様対応と、私どもが展開している通販店舗のレビュー対応を中心に担当しています。

大塚
レビュー対応の担当と言いますと具体的には何をされているのですか?

望月
お客様が楽天市場店でお買い物をされた時に店舗のレビューを書いてくださるのですが、そのレビューに対して、全件ご回答しています。

大塚
全件ですか?相当な数ですよね。

望月
そうですね。繁忙期は遅れることもありますが、モール全体でも全件コメントを返している店舗は少ないと思います。

大塚
なるほど。では個人のお客様からの問い合わせを電話やメールを中心に応対されているということですね。

望月
「おもいやり隊」は通販部門から始まったのですが、今では個人のお客様の総合お問い合わせ窓口になっています。以前は「実店舗」で購入された個人のお客様からのお問い合わせは流通受注部門で対応していましたが、全国のお客様から「どこで買えるのか?」というお問い合わせが増えたり、また個人のお客様と法人のお取引先とはお問い合わせの内容が全く違うので、「おもいやり隊」でまとめてお受けしようということになりました。

大塚
望月さんは「おもいやり隊」の責任者をされる以前は、通販事業や流通部門をご担当されていたということですが、どんな経緯があったのですか?

望月
当店は代表の井手が楽天市場に出店したのが始まりで、その後私が2代目の店長として楽天市場店を運営していました。当時、通販店舗の運営は一人で行っており、受注・出荷の業務は流通メンバーが少人数「かけもち」で担当してくれている状態でした。

なので、販売から受注、そして出荷まで全てを自分でやる必要がありましたが、おかげで大半の業務内容や勘所が身につきました。その後会社が大きくなるにつれ人数も増え、だんだん業務が細分化されていきました。

私は会社が30名弱程度の頃から「なんでも屋」として動いていた経験が長く、つぶしがきくので(笑)、会社で「こういう所に課題がある」とか「ここの業務を変革したい」など、課題がある部門に投入される機会が最近は多いのかな、という印象です。

通販の店長をやったあと、直近5年間ほどは法人の受注・CS、通販の受注・CSに加えて、経営企画と経理の業務を担当してきたのですが、やはり販売管理システムやバックオフィスの処理全般の話が絡むので、いきなり未経験者が担当するのは難しいという理由もあり、会社もリソースが潤沢じゃないですから、おはちが回ってくるんだと思います(笑)。

大塚
一般的にCS部門の方って、通販事業の責任者や他部門から異動してくることってそんなに多くないですよね。通販事業責任者を経験された上で全社的なCS責任者をされると、どう過去の経験が活かせるのでしょうか?

望月
そうですね。店長としての経験があるのとないのとでは全く違うと思います。というのも、ずっと「商売」かつ「責任者」としてお客さんとの対話を重ねてきている訳ですから、基本的な接客は当然身に沁みてるのと、「商売として永続的に成り立ちつつ、お客様に喜んでいただけるCSとはどうあるべきか」みたいな思考回路が初めからありますよね。これは全国のリアル/ネットを問わず、何かしらの店舗の店長さんには当たり前の話だとは思いますが。

 どこの店舗で売っているかを個別確認し、電話でお伝えすることも

大塚
流通部門もご担当されていたということですが、その経験も活きるのでしょうか?

望月
そうですね。ビールって色んなお店で手軽に買えますし、送料もかかるから通販で買いたくないというお客さんも多いんですよ。なので、「うちの近くだと、どこの店舗で買えるの?」という問い合わせがあるのですが、日本のビールメーカーの商流として、私どものお取引相手は小売店舗さんでなく、卸業者さんなんですよね。なので、卸事業者さんから先、どこの小売店舗に商品が配荷されているかまでは直接のお取引先じゃない私たちでは正確に把握できないんです。

ただ、うちのビールを採用いただいている流通チェーンはもちろん把握できますし、この配送センターからは◯◯店に卸している、みたいな事は大体分かりますので、当たりをつけて該当住所近くの店舗さんに聞いていくんです。すると、お客さんのお住まいの近くで「○○というお店にありましたよ」とお知らせできるようになるんです。

大塚
そのあたりは経験がないと分からないですね。
今お聞きした話ですと、直接店舗に電話して確認しているのでしょうか?

望月
はい、そこは大事なのでやってます。チェーン店でも店舗によっては店長や発注担当の方の判断で置いていない、または売り切れている可能性もあるので、必ず確認しています。お客さんの住所から店舗一覧を検索して、3つくらいの店舗に電話をかけます。そして、「電話で確認してみたところ、お客さんのご住所だと、B店とC店にありましたよ。」と伝えます。お客さんも「そこまでしてくれたんだ!」と喜んでくれますよね。

大塚
それはすごい!ただ、そこまでカスタマーサービスをやられると、効率が悪くなると思うのですが、なぜそういったことをやろうと思ったのですか?

望月
実は、当店のCS部門は「受注+CS」が仕事で、去年まではそこに「情報システム」もくっついていたんですが、去年から今年にかけて部門人数は縮小させているんです。半分くらいの人数になっています。なので、効率は逆に良くなっていて、かつCSのクオリティも大幅に向上しています。

というのも、元々は通販サイトや販売管理システムが複数あって、システムごとに受注・CS担当がついていました。5つの仕組みがあり、そのうちいくつかの仕組みは独立していて、それぞれに担当がいないと回らず、人数が多かったんです。

それを一つの販売管理システムで全サイトを管理できるように変えました。そういうシステム的な整理と、業務の「自動化」と「外注化」を去年から進めてきました。

 受注業務の外注化で充実した顧客対応が可能に!店舗レビューは全件返信

大塚
外注されているんですね!

望月
2018年2月に外注が始まり、4月には単純な受注に関しては90%以上を外注処理できるようになりました。

外注費用は変動費として発生しますが、社内の個人顧客向け受注・CSにかかる費用は大きく減っているんです。社内で受注処理にコストがかからなくなった分、カスタマーサービスには、どこまででもやっていいよ!としています。なので、カスタマーサービスを強化しつつも、実は社内コストは大幅に下がっているんです。

大塚
受注業務の自動化を進めたというお話もありましたが、具体的にはどういうことですか?

望月
「CROSS MALL(クロスモール)」という販売管理システムを使っているんですが、今までなかった自動化機能が、一昨年に実装されました。

ただ、受注事務は「決済(売掛)」に直接影響する部分なので、大幅な業務フローの変更は結構勇気とリソースが必要で、簡単に自動化には踏み出せなかったんです。ただこれを実現すれば外注するコストも大幅にさがる話ですので、閑散期に一気に切り替えようと決めました。

ただ、頭で「これは必ずやった方がいい!」と分かってても、未経験の事をする(しかも大掛かりで責任重大)訳ですから、いきなりマニュアルを見てよろしく!って訳にいかないですよね。なにがベストな設定かも分からないし、業務フローも見直しが必要だし。で、ここは私の強みだと思うんですが、通販事業を長くやっていたので、色んな店舗の店長さんに知り合いが多いんですよ。

なので、先輩の店舗にお願いして押しかけて(笑)、考え方・設定の仕方などイチから直接教えてもらいました。お仲間店舗には感謝・感謝です。おかげで、一般的には考えられないような短期間で設定が進み、外注も非常に少ないコストでできるようになりました。

藤本
外注や自動化をしようと思ったきっかけや課題があったのですか?

望月
社内のスローガンとして、「ザッポスを目指し、そして越えよう!」を掲げています。なので、おもいやり隊も人員配置と仕事の中身そのものを変えたかったんです。

繁忙期は毎月何万件もご注文があるので、去年までは「受注・CS部門」と云っても、「受注」業務の方がメインでした。もちろん、そもそも受注ができないと商売できませんからね(笑)。業務として「受注>CS」だったんです。

「お客様対応」の方に時間をかけたいと思っても、なかなかできない状態でした。それを会社のスローガンに照らしたとき、これは受注業務が主で、お客様対応が従という構造自体がダメだなと。そこで、CSのクオリティを上げるために、まず受注業務をできるだけ自動化して、かつ外注化していく方向性を志向しました

大塚
そうなると、CSを担うおもいやり隊の人数は半分に減っていますが、お客様対応に割ける時間は大幅に増えているんじゃないですか?

望月
そうなんですよ。実は今「受注・CS」チームは5人居るんですが、受注業務は「外注先での受注管理」を行っているだけで、ほとんどお客様対応の業務しかしていません。全ての時間をお客様対応に使えるので、できることが圧倒的に増えました。こちらからお客さんにアプローチしたり、より深い対応をしたり。今までできなかったことができるようになりましたね。

大塚
具体的には、どういったことをされているんですか?

望月
まず出勤したら、朝までに届いたメールとレビューを確認します。すぐに対応しなくてはいけないご指摘の対応は最速で行いますし、お客さんからのちょっとしたメッセージやサインを見つけたら、それにも対応します。

例えば、「子供ができたので、大好きだったよなよなエールをしばらく飲めなくなります。でも、生まれた暁にはまた飲みたいと思います!」という定期購入のお客さんからのメッセージがあった場合に、時間的な制約もあった今までは、メールで「可愛い赤ちゃん生まれることを願ってます」とお送りしていました。もちろん気持ちを込めて。

それが今では、「お手紙書こうか!」とか「『おめでとうございます!スタッフからの気持ちです!』って、小さなお祝いの品を送ろうか!」など、お客様に喜んでもらうための対応がトコトンできるようになりました。

そうしたスタッフ個々人の自発的判断で、「お客さんのために何かしてあげたい」と思った時に使える予算も設定しています。

 トラブル時にはコスト度外視!2,000円のご注文に航空便を使うことも!?

大塚
予算もあるのですね!何か印象に残るエピソードはありますか?

望月
例えば、離島にお住いのお客さんから父の日ギフトのご注文を頂いたのですが、モバイルページの表記の曖昧さが原因で、当日配送に間に合わない時間にご注文が入ったことがありました。

その時はすぐに、羽田空港にメッセージ入りのギフトを持ち込んで、航空便で送ることで、父の日になんとか間に合わせることができました。

他にも、出荷指示データの設定エラーがあり、長野県からギフトを再出荷してもタイミング的に間に合わなくなってしまった事がありました。その時は、社用車の中でギフトを再セットアップしながら、首都圏のヤマトの大型拠点に荷物を持ち込んだこともあります。長野県内のお客様には、私が直接父の日ギフトをお届けにあがりました。

ギフトって「特定の日」に届けなくてはいけない事が多いので、間に合わないというのはNGなんです。なので、どうしても無理な場合を除いて、トラブルが発生した場合にはあらゆる手段を使ってお届けしています。そこは完全にコスト度外視で、2,000円のビールのご注文でも航空便を使って配達することもあります。

大塚
すごいですね!それはおもいやり隊の判断で?

望月
はい。スタッフの判断でOKです。もちろん、何か起こると部門を超えて有志や責任者で解決に当たります。また、ASPのヤマトの荷物追跡システムを使ってまして、それを使うと配送状況の詳細な確認ができるんですよ。ヤマト社内で見られる情報とほぼ同レベルで。例えば不明荷物とか、中継点スキャン未通過とか、汚損とか。

「父の日」などの大型商戦では、それを使って、着日の「前日」までにお届け先の最寄りの配達店に、荷物が正しい状態で着いているかどうかを全件確認しています。配達店まで無事に行っていれば、あとは当日配達時に何か事故がなければ問題なく、高い確率で正しい状態で届くだろうという判断です。

そういう風に荷物を追っかけて、もし途中でステータス異常が出ていたら、同じギフトを間に合うように再出荷します。ギフトに関してはそういう事前の確認もみっちりやってます。

藤本
システム上でお客さんの自宅の近くに荷物があるどうかを確認というは、一個一個目視でやっているんですか?

望月
それがASPのいいところで、配送番号の一括登録ができるんです。それで、イレギュラーステータスが発生している注文だけ見ればいいわけです。

 まとめ

お客様からのお問い合わせ対応や、通販店舗の全件レビューなど個人のお客様の総合お問い合わせ窓口になっているという「おもいやり隊」。受注業務を外注・自動化する事で、CSを強化しつつも社内コストは大幅に減っているようです。

現在では、受注・CSチームはほとんどの時間をお客様対応の時間に使えるようになったっと言います。その結果、お客様にできることも圧倒的に増え、深い対応やお客様に喜んでもらうための対応がトコトンできるようになり、スタッフ個々人の判断で使える予算も設定していらっしゃいます。

ギフト注文に対して、航空便を使ったり、直接スタッフがお客様へ届けたりするのも、全てスタッフの判断であり、お客様にどうすれば喜んで頂けるかと常に考えているからできるのではないかなとお話を聞いて感じました。

後編の記事では、イベントによる関係性向上の効果や、ニックネーム性やスタッフのキャラクターによる個性とイベントの関係性。チーム間の相互理解が深まる勉強会や社内メルマガ、お客様からの声を全員で意見を出し合う重要性などをお話しして頂きましたので、続けて後編もご覧ください。

 

■大塚 真吾
プロサッカークラブのマネジメント職を経験後、ダイレクトマーケティング支援の株式会社ファインドスターに入社。サブスクリプション型の通販のマーケティングを100社以上支援。2013年、スタークス株式会社に入社し、2016年取締役に就任。現在、クラウド型の物流プラットフォーム「クラウドロジ」とLINE@に特化したCSツール「CScloud」を提供。

■藤本 大輔
1982年 福岡生まれ。テレマーケティング会社で電話営業を経験の後、コンタクトセンター運営会社に移り約10年間大手インターネットサービスプロバイダのコールセンターマネジメントに従事。その後、大手ソーシャルゲーム会社のCSを経て、フリマアプリ運営会社のCSグループマネージャーとしてチャットサポートの導入やCSイベントの開催を主導。現在はコードキャンプ株式会社のCSチームを率いる。本業の他に日本で唯一の「カスタマーサポート エバンジェリスト」として、コンサルタントやCSイベントの企画などで活動中。キャッチコピーは“CSに狂っている男”。

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